は行

ピアノの森

制作年度:2007年
監督:小島正幸

美しい森の舞台に月のスポットライトを浴びたピアノ。
紡ぎだされる音色が空を翔けて心に風を運んでくる

正反対の境遇の少年ふたりを繋いだピアノ。

「ピアノなんて遊びだよ。レッスンなんて面倒なもの嫌だね」
『僕にとっては遊びじゃない。弾くことが僕の全てなんだ』

只、好きなだけ遊びに弾いていただけの海。
物心付いた時からピアニストの父と同じ道を歩むためにピアノを弾いている修平。
ピアノを通じて友達になったふたり。
弾ければいいとピアノを軽んじていた海。
失敗は許されない、弾かなきゃいけないとプレッシャーに耐える修平。

「なんでだよ。なんでこの曲だけ弾けないんだ」
ピアノを弾く技術、修平の努力に目を向けた海
『僕はずっと努力してきたのに、どうして何もしてこなかった彼の方が…!』
修平の海の才能への僅かな嫉妬

美しいピアノの音色に乗って少年たちの心が揺れ動き、解りあっていく。
まるでお互いの心の中のピアノの調律をするように欠けた部分を補って
激しくはないけれど、確かに根付いていく友情。

「なぁ俺さ」
『うん。忘れてたけど僕も』
「『ピアノが好きだよ。』」

辛いことがあった時
何もかも投げ出したくなってしまった時
そんな時が来ても、森のピアノはずっとそこにある
キミがずっとそこにいる
忘れないよ──

見終わった後、暫く作中の美しいピアノの旋律が頭に残っていました。
優しい気持ちになれる、とても素敵な作品。
派手さはないけれど、じんと心に染み入り、私の心も調律してもらえました。
原作は読んだことないのですが、機会があったら読んでみようかな。

しかし、一つだけ…
どうしても声が気になってしまう。
下手ではないんですが、やはり本職の声優さんと違ってどうにも棒読みっぽく聞こえてしまう箇所があるのが難点。
何故、本職の声優さんを使わないのでしょう?
その点だけが残念です。

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ハンコック

制作年度:2008年
監督:ピーター・バーグ

急にシリアス展開になる後半に違和感を感じます。

ヒーローなのにアル中で人助けしているのに厄介者扱い。
くさって世の中くそくらえっ!なんて思ってみても、やっぱり放っておけなくて人助けしてしまう。
そんな彼に命を救われた男が彼を大人気のスーパーヒーローになるようにプロデュースする。
ほのぼのしていてコメディちっくな前半は面白くて釘付けだったんですが、後半での突然のシリアス展開。
え?ええ???
コメディ仕様になってた頭がついていかないよ。
ていうか、もう少しハンコックのプロデュース後の活躍を見たいんだけど。

個人的には元妻の存在無くしてプロデュース話に的を絞ってコメディに徹してくれた方が良かったなぁ。
せっかく人気集めに成功したのにまた失敗したハンコック。
やはり彼をヒーローにするのは無理なのか?
そんな時に大事件が勃発し…なんて展開で90分だったら思いっきり楽しんでこれたかも…
なんて勝手なことを思ってしまいました。

でもまぁ、それなりに楽しめたんですけどね。

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火垂の墓

制作年度:1988年
監督:高畑勲

放映当初は泣いたし、意地悪おばさんに憤慨したものなんだけどね。
父親が病気で無職になり、母は知的障害の妹抱えて働けなくて
私の稼ぎが一家の生計を担い始めた時に見たら意地悪おばさんの気持ちの方が痛いほど解ってしまった。

人を養うって大変なんだよね。それこそ自分は我慢の連続ですよ。
おしゃれは二の次。まずは家族のご飯と医療費捻出。
まだ20歳になったばかりの頃の私。服も欲しかったメイクもしてみたかった。
でもね、それ買ってたら家族がご飯食べられないから。
意地悪おばさんはその我慢すら食料の我慢だったわけですよ。
家族のご飯を確保するのも難しいのに、自分達すらお腹いっぱい食べられず我慢しているのに、働かない食べるだけの子供が2人。
そりゃ、意地悪もしたくなるよなぁと。

そう考えてしまうと兄のとった行動はけして褒められるものじゃないなと。
自分の14歳を振り返ってみたんだけど、あそこまで幼稚じゃなかったと思う。
まぁ、自分の場合は特殊な環境下にあったからかもしれないが。
(それこそ、妹のことネタにいじめてくる幼稚なヤツらから妹と自分自身を守るには強くならなきゃ!だったしね。)

家でごろごろしている間に働き口を探すとかすれば少しはおばさんの態度も違った筈。
働き口が無いなら、せめて手伝いくらい申し出ればよかったのにね。
自分が14歳の頃、親戚の集まりがあったりすれば言われる前に手伝いを申し出る分別は私は持ってたぞ。
14歳はけして何も出来ない、わからない子供じゃないよ。
妹を全力で守ろうとしていたのは分かる。
分かるが、あまりにも無知過ぎる。

当初は感動した筈なのになぁ
歳を重ねるごとに感動出来ずに冷めていくんだよなぁ
困ったものだ…

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ハプニング

制作年度:2008年
監督:M・ナイト・シャラマン

私はこういうの好きです。
とにかくラストまで作品に惹きこまれました。
"正体不明の攻撃者"
誰の仕業か?何の仕業か?
『人が突然死ぬ』
その結果に結びつく情報が何も無い。推測を巡らしてもそれは仮定でしかなく断言は出来ない。対処を間違えれば死が待っている。
その緊迫感と恐怖を味わえばいい。

・環境問題について考えるのも良い
植物が人間を敵とみなし自己防衛のために化学物質を出す。
人類に対する自然のアレルギー反応?
あるいは長年蓄積された人間の垂れ流す科学物質がついに浄化しきれず放出されたのか?
これが因果応報というものなのか

・慈愛の精神について語ってもいい
人間の持つ攻撃性、傲慢さ
その性質が強く現れた時、所詮は己を破滅に追いやる
自分を形作る自然や人や全ての物に慈愛の精神を忘れてはいけない。

謎解きを楽しむのもメッセージを読み解くのにも充分な素材が揃っています。
でも、この映画に完全なる答えを要求したら一気に駄作に成り下がるのではないでしょうか。
そもそも、答えというなら作中で早々から出ています
『科学は万能ではない』
全ての事象に全て解答が用意されているわけではないのだと言い切っています。
それでも人は解答を求める。
目の前に置かれた問題が解らないのは情報が足りないせいだ。
もっと情報を集めて完全なる論理が組み立てられたら対処しよう。
答えが解らない
意味が解らない
そう思っている私達観客の思考も実は監督が狙った演出の一部なのではないかとさえ思えます。

『そして惨劇は繰り返される』

ラストまでしっかりと緊迫感を残して観客の心をガッチリ掴んでいたと思います。

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ブレイブワン

制作年度:/2007年
監督:ニール・ジョーダン

ラストまではとても惹き込まれました。
家族を持たないエリカが、愛する男性と結婚を控え幸せいっぱいの日々を送っている。
彼女の目にはN.Yの街は暖かな光を纏い優しい日常を与えてくれる場所。
ビルの片隅が商店街の活気がファーストフードの店も
彼と歩くこの街は幸せな自分を見守っていた。
なのに…

突然の不幸。
いつも訪れていた公園。彼との時間を楽しんでいた場所で理不尽な暴力を受ける。
彼は殺され、自分も死線を彷徨う程の怪我をおわされた。
一瞬で壊された幸せ。
あれほどに愛していた街は姿を変えていた。
どこもかしこも闇を滲ませ彼女の足をすくませた。
恐怖でしかなくなってしまった街へ、それでも出て行ったのは彼のため。
彼の命を奪った者たちへの怒りと憎しみ。
きっと警察が彼の無念を晴らしてくれる筈。

しかし警察ではうわべだけの同情の言葉と形式的な対応のみでロクな捜査をしていなかった。彼女の悲しみや心の傷などおかまい無しに日々起きる事件の
「ほんのひとつの出来事」として忘れ去られようとしていた。
警察は何もしてくれない!絶望感は恐怖を煽る。
警察は市民を守ってはくれないのだ。彼の仇などとってはくれない。
最初は護身用のつもりで購入した銃だった。
心の片隅に復讐という目的もあったかもしれないが、銃というお守りを持たなければ街を歩けなくなっていた。
闇に彩られた街は恐怖に満ちた彼女を引きずり込もうと黒い口を開けているのだから。

たまたま立ち寄った店で事件が起きた。
彼女は購入した銃で自分を殺そうとした犯人を射殺してしまう。
この時、彼女の中で何かが壊れていった。
恐怖に打ち勝つ『力』を手に入れてしまった。
そして法への復讐心も芽生えてしまった瞬間だった。
この事件をきっかけに彼女は『処刑人』となって悪人をその銃で始末しはじめてしまう。

あいつは悪いヤツだ。私は悪いヤツを始末しただけ。
警察など何もしてくれない。
だったら、私が罰を与えてもいい筈でしょう?

何を言ってるの?!私は人を殺したのよ。許されない行為だわ。
こんなの、正義じゃない!

このエリカの心の葛藤そのままに『処刑人』に対して世間の賛否が寄せられる。
でも、誰も彼女を止められない。
そして彼女の傍に現れた『処刑人』を追う刑事。
彼は言う。処刑は法の下で警察が行うべきだと。

そう、彼女を救うには法に裏切られ罪を犯した彼女を法によって裁くべきだったのだ。
彼の復讐と共に法へも復讐していた彼女。
法に裏切られたことがもたらした恐怖が彼女を闇へ引きずり込んだのならば、
法による裁きで罰を受けなければ永遠に彼女は闇の中だ。
彼女自身、自分のしている行為があの憎むべき犯人達と変わりない行為だと感じていたのだから。
それでも衝動を抑えられない自分に苦しんでいたのだから。

人間とは弱いものだ。あらゆる欲に理性を失うこともある。
悲しみに我を忘れることもある。
誰かが何かが一定の枷を嵌めなければ暴走する。
だからこその法律なのだと思う。
罪は角度を変えたら罪ではなくなる。見る側によって形を変えてしまうのだから。
無理やりにでも見る角度を固定しなければ社会が成り立たない。
感情でそのルールを曲げてしまってはいけないものなのだと思う。

刑事の気持ちも理解はできるが、あのラストはけしてエリカの救いにはなっていなかったと思います。
この映画に正しいラストなんて存在しないのかもしれません。
でも、彼女の苦悩と痛みを見せられていただけに救われなかった彼女の姿にどうしても納得がいきませんでした。

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ヘアスプレー

制作年度:/2007年
監督:アダム・シャンクマン

思いっきり元気を貰いました。
ここのところ、仕事のストレスで不眠と食欲減退で疲れ果てているうえに、いつもは何とかこなしている週末の障害者施設から帰省してくる妹の世話が普段以上に心と身体に負担を感じていて
「もう嫌!疲れたっ!!楽になりたい!!!」
と追い詰められていた私。
しかし、この作品を見ていたら心の中のどろどろと淀んで燻っていた負の感情が一気に解消された気分です。
映画など全く理解出来ない妹を一緒に連れて行ったのですが、音楽が大好きな妹は楽しい音楽にご機嫌で上映中ずっと身体をゆすって見ていました。

そう、楽しい音楽とパワフルでキュートなダンスにこちらまで踊りたくなってくる。
気がつけば手と足がリズムをとっていました。そして更にふと気付けば周囲の人も皆リズムをとって身体が動いているじゃありませんか。
わーなんか一体感♪嬉しいなぁ。

ストーリーは極めてシンプル。少し人種差別に対する批判をテーマにしているものの暗くなり過ぎずに作品の底抜けの明るさに合わせてさらっと表現しています。
その一見ノーテンキっぽい雰囲気が逆に
『人種差別なんてしてたらバカバカしいよっ♪』
とストレートに訴えてきて重々しく語られるよりもしっかり心に響きます。
とはいえ、この作品はテーマは何か?とかメッセージは何?とか考える類ではなく、とにかく「楽しんじゃえっ♪」が正しい鑑賞姿勢かなと思います。
おデブのニッキーちゃんの素晴らしい歌声とキュートな笑顔。その体系からは想像出来ないビックリするほど軽やかなダンスに釘付けです。
そしてニッキーちゃんだけでなく登場人物の全てがしっかりとキャラが立っていて飽きさせない見事なストーリー展開。
敵役までもがなんだか憎めない、愛すべきおバカキャラ。
楽しくて楽しくて、終わってしまうのが寂しいくらいでした。

見終わった後、すっかり音楽が気に入った妹に
「もう一回」
とせがまれました。
ごめん、妹よ。2人分のチケットを再び買ったらお姉ちゃんは破産します。
そんなわけでサントラは買いですね♪

あ~、私も何だか踊ってみたくなりました。
まぁ、まともに踊れるのは盆踊りくらいなんだけども。

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HERO

制作年度:/2007年
監督:鈴木雅之

『一見さんお断り』
まぁ、つまりそういう映画ということですね。
私はドラマを全く見ていません。
会社の後輩が『HERO』ファンで
「2時間ドラマのレベルだった」
と酷く残念がっていたのです。なら、ドラマ未見の私は尚更観に行くまでもないだろうと予定には全く入れていなかったのですが、後輩が
「映画好きの人の意見が聞いてみたい」
と言うので、じゃあ観てみるかと思って行ったのです。

で、検事のドラマだということだけ聞いていたので法廷劇を想定していったのですが、冒頭からだらだらとつまらない展開が繰り広げられる。
そもそも登場人物の人となりが分からないので時折挟まれるコミカルなシーンにしらけてしまって正直言って幼稚な印象しか受けない。
ドラマ見てないと辛いなぁ

法廷劇の醍醐味は証拠、立証、駆け引き、話術
検事と弁護士の緊迫感溢れる戦い。
しかしながら、この作品は偶然と運とご都合主義で肝心の法廷に全く緊迫感が無い。
いや、もしかしてこのドラマの主人公は元々『運の良い人』という設定なのかな?
ますますドラマ見てないと辛いなぁ

時々出てくる意味深な重要人物らしい人たち
過去の事件に関係しているらしいことが少しだけ語られる。
でも、ドラマ見てないから何のことだか分からない。
何のことだかわからないから、しんみりしたシーンもどこか他人事。
ほんっと、ドラマ見てないと辛いなぁ…

しかし、ドラマを見ていたとしてもこの作品に高得点はつけられないかもしれないなと思いました。
演出も脚本もね映画向きではないんじゃないかな、多分。
例えば法廷での駆け引きに使われるであろうネタを検事が見つけた際の演出も少々くどい。あの場面は一瞬のみで後の法廷シーンで種明かしをする方が余程か観客に緊張感を与えることが出来る筈。
毎週放映のドラマのように一週間も客を繋ぎとめる必要は無いのだから
「ここは見せ場ですよ~!」
なんてくどく説明する必要はないのです。
そういった色々な場面でドラマのレベルだなと感じるんですよね。

せめてもう少し退屈しない展開なら良かったんですが、韓国スターの集客力をあてにしただけのような「展開無理やりだろ」な雰囲気漂う韓国シーン。
ドキドキもしない恋愛要素。
いつ終わるかなと時計を見た時はまだ1時間しか経過していなかった。
うそ~1時間30分は経ってるかと思ったのに。
途中で時計を見てしまったのは今年は『大日本人』以来の2作目です(苦笑)

ドラマを知らない
韓国スターに興味が無い
ついでにキムタクのファンでもない
こんな私が観ることが間違っていました。すみません。

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パーフェクト・ストレンジャー

制作年度:/2007年
監督:ジェームズ・フォーリー

観終わってすぐの私の感想
『ブルース。こんなあなたを見たかったわけじゃないのに…orz』

ラスト7分11秒。あなたは絶対騙される。
ええ、私は確かに犯人の予測はついてませんでした。騙されたといえば騙されました。
なのに全然驚きが無いってどういうことだろう?
何故自分がこんなに冷めているのか考えてみました。

・大好きなブルース・ウィリスの扱いが嫌だ
・ヒロインが好きじゃない
・ヒロインの協力者が気持ち悪い
・皆が怪しい行動取るけれど繋がりが無さ過ぎて退屈だった

ああそうか。誰にも感情移入出来てないじゃん私。
登場人物に全く魅力を感じてなかったんだなぁ…
犯人は確かにわからなかったけど、犯人が嫌いなタイプの人間だったのでわかった瞬間も
「あ、そう。勝手にすればぁ?」
驚く前に『どうでもいい』気分にしかならなかった。
そもそも作中に、観ている観客が謎解きを楽しめる程の伏線が殆ど無い。
(あったけど、見終わってから「ああ、あれ伏線だったのか」と気付くくらいの小さい上に面白くも無いもの)
途中がつまらな過ぎて、あの程度の真実では衝撃受ける程のオチではない。

そして何よりブルースの役回りがね・・・
折角彼を起用してこれだけなんですか。
こんなギャグ担当な役なんですかっ(涙)
(いや、一応シリアスな役どころな筈なんですよ多分。お笑い担当に見えたのは私だけだろうと思いますが)
なんで彼を起用したんだよ…
なんでオファー受けちゃったんだよ…
情けなくて涙が出らぁ。

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ベクシル

製作年度 2007年/日本
監督    曽利文彦

うん、面白かった。もう一度見たいってくらいには。
でも…
面白かった筈なんだけど、何か喉に引っかかってスッキリしない。
手放しで絶賛できないというか。

私の場合、他の方々のおっしゃるような他作品の模倣だの新鮮味が無いだのとかの感想は持てません。
そもそも、『アップルシード』?という作品を見たことがありませんし、SF作品にそれほど詳しいわけでもないからです。
その私の視点で言えば、メカデザインや建造物、ハイテク品の数々はとても面白く、見ていてわくわくしました。
『全世界を大きくリードしロボット産業の頂点を極めた日本は、その技術力により人型ロボット(アンドロイド)の実現に至る。それに脅威を覚えた国連によって規制という鎖に繋がれようとしていた。それを不服とし、日本は国連を脱退。ハイテクを駆使してあらゆる情報、物理的介入をシャットアウトし鎖国へと突入した。そして10年─』
この素材にもとても興味を引かれました。

作中の迫力満点の戦闘シーン。
鎖国によって日本はどう変わっているのか?
10年という時を経て、変わっていた恋人の心とそれを受け入れるしかない厳しい現実。
恐ろしい筈のジャグの悲しさ。

材料は一級品だったのです。
でも、調合を間違えているのかな?っていうか…
とにかく、薄いんですよね。味付けが。

戦闘シーンには文句無しなんですが、鎖国に至る描写はもう少し練りこんでほしかったなぁとか。
折角のスパイスである恋話もマリア+レオン+ベクシルの心の動きとか親密さとか描いて感情移入したかったなぁとか。
ジャグの誕生秘話(って言い方も変だけど)を画で見せてもらって、あの悲しい存在を頭に焼き付けたかったなぁとか。

あと、ラストは全く救いが無くて私的には後味悪過ぎでした。
せめてアダムとイヴくらい残しておいてほしかったなぁと…
(これは見た人は解るかとおもいますが、激しくネタバレ的表現なので、この一文のためにネタバレチェック入れました。)

それと、これは個人的な好みの問題だとは思うのですがメカや自然物の動きの緻密さに対して人物がカクカクした動きをしている上に表情が乏しいので少々違和感を感じました。
これが私には最後まで馴染めなかったです。

人物の動きは好きじゃないけど映像は綺麗だし、迫力満点。
脚本は内容が薄いけど、スピード感があって最後まで飽きずにぐいぐい引っぱっていってくれる。
うん、なかなか面白かったよ。
もう一回見ても良いなって思ったよ。

でもね、なんだか喉に異物を感じちゃったのよね・・・

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ピアノの森

製作年度 2007年/日本
監督    小島正幸

美しい森の舞台に月のスポットライトを浴びたピアノ。
紡ぎだされる音色が空を翔けて心に風を運んでくる

正反対の境遇の少年ふたりを繋いだピアノ。

「ピアノなんて遊びだよ。レッスンなんて面倒なもの嫌だね」
『僕にとっては遊びじゃない。弾くことが僕の全てなんだ』

只、好きなだけ遊びに弾いていただけの海。
物心付いた時からピアニストの父と同じ道を歩むためにピアノを弾いている修平。
ピアノを通じて友達になったふたり。
弾ければいいとピアノを軽んじていた海。
失敗は許されない、弾かなきゃいけないとプレッシャーに耐える修平。

「なんでだよ。なんでこの曲だけ弾けないんだ」
ピアノを弾く技術、修平の努力に目を向けた海
『僕はずっと努力してきたのに、どうして何もしてこなかった彼の方が…!』
修平の海の才能への僅かな嫉妬

美しいピアノの音色に乗って少年たちの心が揺れ動き、解りあっていく。
まるでお互いの心の中のピアノの調律をするように欠けた部分を補って
激しくはないけれど、確かに根付いていく友情。

「なぁ俺さ」
『うん。忘れてたけど僕も』
「『ピアノが好きだよ。』」

辛いことがあった時
何もかも投げ出したくなってしまった時
そんな時が来ても、森のピアノはずっとそこにある
キミがずっとそこにいる
忘れないよ──

見終わった後、暫く作中の美しいピアノの旋律が頭に残っていました。
優しい気持ちになれる、とても素敵な作品。
派手さはないけれど、じんと心に染み入り、私の心も調律してもらえました。
原作は読んだことないのですが、機会があったら読んでみようかな。

しかし、一つだけ…
どうしても声が気になってしまう。
下手ではないんですが、やはり本職の声優さんと違ってどうにも棒読みっぽく聞こえてしまう箇所があるのが難点。
何故、本職の声優さんを使わないのでしょう?
その点だけが残念です。

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プレステージ

製作年度 2006年
監督    クリストファー・ノーラン

この作品は私のお気に入りレビュアの方々の評価が真っ二つに分かれていました。
高評価の方のレビューになるほど、そう見るべきなのかと思ってみたり、私と同じ酷評気味の方にも同感と思ってみたりで興味深い。


目を凝らせ 全てのシーンに罠がある」
予告のこの言葉にあおられて期待大で見に行きました。
でも…

サスペンス・ミステリーだと思ってたら人間ドラマだった。
…騙された。

彼は○○○なんだろな~。いやまて!これは観客を惑わすフェイクだ!!んな簡単なもんなわけないよあからさま過ぎるものね。と思ってたらフェイクじゃなかった。
…騙された。

彼の方に大どんでん返しのタネがあるに違いないと思ってたらSFだった。
…騙された。

いっそ予告など見ないで行った方が楽しめたような気すらします。
「目を凝らせ 全てのシーンに罠がある」
なんて言うから、セリフや画面の隅々まで注意深く見過ぎてしまい、その結果としてラストに向けて予想したトリックがそのまんま展開されて拍子抜けしてしまった。
マジック対決だのサスペンスだのに期待してたのでガッカリ。
まぁ、ある意味騙されたようなものですが、予告に(苦笑)

けれど、人間ドラマとして見るならば濃厚な素晴らしい出来です。
『偉業(プレステージ)』のために破滅していく男達。女達の愛の行方。
心理描写は見事でした。セリフのひとつひとつが意味を持ち、重い。
美術にも力が入っていて画面の美しさは必見です。

ですが、私の期待したのはサスペンスでありSFではありません。
あの無茶苦茶なありえない物の存在は、
たとえ復習劇が完璧でも人間を濃密に描いても、愛の形を示されても
それらの感動の全てを台無しにされました。

つまらないとは言いません、しかし非現実的なあの物体は大きく評価をマイナスしてしまいました。

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パイレーツ・オブ・カリビアン ワールドエンド

製作年度 2007年アメリカ
監督    ゴア・ヴャービンスキー

3時間を長いとは思わなかったし、楽しめたのですが画の迫力と勢いだけで見せられたという感じです。
(セリフ量が多くて字幕追うのに大変だったのも付け加えておきます)

このシリーズは1作目がとても楽しくて2作目も見たのですが、その時も「ん?」と首をひねってました。
でも、続き物だったし…と3作目も見に行ったのです。
シリーズを全部見て
アクション、CG、画の迫力、音響はレベルアップ↑
ストーリー展開、キャラクターの使い方はレベルダウン↓
といったところですね。
各キャラクターには其々の想いがあり、苦渋の選択の末の行動である筈なのに全く感動出来ない。
味方と敵と裏切りと策略と…
たいして説明もそれを理解させるシーンも無いままコロコロとキャラクターの立場が変わり、
「え…っと、今はこの人『どちら側?』」
考えているうちにまた立場が変わっている。
つ…ついていけないよぅっ(涙)
いや、もしかしたら私の理解力が足りないのかもしれないんですが。
…足りないのかな。ちょっと悲しい…

折角のご大層な伏線を絡めて登場の女神は巨大化と天変地異だけで全く
『悪魔のような女』ではない。
なんかね、結構色々期待したんですよ。
女神カリプソの脅威とそれに翻弄されるパイレーツ軍やベケット卿軍とか。
愛など信じられない、お前は俺を裏切ったと愛するカリプソに背を向けたディヴィ・ジョーンズとカリプソの愛の復活とか。
何も無かったよ…(がっくし)

1作目のわくわくするような冒険とか童心に帰れるパイレーツの夢いっぱいさ。
会話のコミカルさやキャプテンジャックの飄々とした自由な心。
私が好きになった『パイレーツ・オブ・カリビアン』の魅力が殆ど無くなってしまっていました。
ジャックは頭弱そうで運だけ男に見えるし、あんなに楽しかった会話は全く笑えなくなってるし。
そして、それ以上に血生臭いシーンが増えて夢なんて吹っ飛んでしまってました。

それでも、私は映画館で鑑賞してよかったと思いました。
映像と音楽は迫力があるので音響バッチリ、大スクリーンで鑑賞する醍醐味がある。
…というか、それが無いとかなり辛い出来ですコレ…
家庭の小さな画面で見てると視覚の迫力が半減する分、大雑把な脚本、矛盾の方が気になってしまい楽しめないから。

あと、エンドロールを最後まで見ずに帰る人の多いこと・・・
2作目のようなおまけ映像ではなく、本当のラストシーンがあったのに。
・・・・・っていうかさ、ああいうのを最後に流すなら、エンドロール流す前に観客に何かしら予感させるようにヒントくらい残してあげようよ!
最後まで見ない観客が悪いんじゃなくて、見ようと思わせるように作れなかった製作者側が悪いんだと思う。

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パフューム ある人殺しの物語

製作年度 2006年ドイツ/フランス/スペイン
監督    トム・ティクヴァ

見ている者の記憶を揺さぶり、映像から匂いを創造させるその手腕は見事。生臭さや腐臭が漂ってくるようでした。
そんな中で主人公が惹かれた芳香を漂わせる女との出会いの美しい映像。花の香りでも漂ってくるよう。
そう、映像は素晴らしかったんです。でも、ラスト20~30分の展開は私的にはかなり唖然としてしまいました。
原作がこうなっているのなら仕方ないとは思いますが、それまでの視覚で魅了されスクリーンに釘付けになっていた私のテンションがストンっと下がってしまった。
主人公の己では気付かなかった初恋とその対象であった女の芳香への執着や貪欲なまでの欲望は現実味を帯びた緊張感を生み出していたのに、
ラストの処刑台での展開は嘘くささに失笑してしまいました。
体臭が無い自分に女達を殺して作った究極の香水を降りかけて民衆に食らい尽くされるラストも処刑台のあのシーンでテンション下がっていた私はあまり衝撃も受けられず…
処刑台のシーンで唯一じんわりきたのは主人公がやっと執着していたのは香りではなく、あの赤毛の女そのものだったと気付き涙するシーンだけ。
面白くないとは言いませんが、他人に勧められるか?と訊かれたらちょっと躊躇してしまいます。

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ブラッド・ダイヤモンド

製作年度 2006年アメリカ
監督    エドワード・ズウィック

お恥ずかしい話ですが、私はこの国のことを知りませんでした。
ダイヤの中にはこんな背景を持って商品にされている物があることも・・・
この映画の素晴らしさはこんな私でさえも紛争の背景や世界観を理解出来るように練られ作られている脚本の素晴らしさにあると思います。
そして其々違った世界に生き、違う物を求めている
ソロモン マディー アーチャー
この3人が交わる元になるダイヤの存在。
見事な展開で観客をストーリーの中に引きこみます。

私はこの映画を見てダイヤを買わないとは言いません。
それがこの映画のテーマではないと思うし、正規のルートでダイヤを売買し、それで生計を立てている方々もいるのですから、安易にアフリカのダイヤに対して不買運動的なことは言えません。
只、そのダイヤのルートが本当に正規であるのか?
自分が持つべきダイヤであるのか?
消費者としてのあり方を考えていくべきだとは思いました。

ディカプリオですが、彼の存在感をこれ程に感じた映画は初めてです。
実は、ディパーテッドを見た時は作品自体も何故これがアカデミー賞?
と感じるほど私的には素晴らしいとは思えず、しかも彼の演技にもそれほど魅力を感じていなかったのです。
どの映画の主演を演じても
「ソツなくこなすが突出してはいない」
という印象だったのです。今後の彼には大きく期待出来そうです。

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プラダを着た悪魔

製作年度 2006年アメリカ
監督    デヴィッド・フランケル

あまり期待していなかったんですが、これが意外に面白かった。
女の子が元気に頑張るだけのマンガ的作品には違いないんですが、テンポの良いストーリー展開と随所にちりばめられた小ネタやさりげない演出が見ていてとても楽しい。
画面に溢れる服や小物の数々は見ているだけでわくわく。
女性の変身願望も満たしてくれます。
賢いけれど、サエない服を着た女が仕事のためにどんどん綺麗におしゃれにハイセンスに変わっていく姿は見ていて凄く気持ちが良い。
無理難題をふっかけてくる女ボスの命令もギリギリの所で解決していく過程も楽しい。
そして何より、登場人物たち其々の個性と魅力が溢れてて嫌味なはずの女ボスすら最初から憎めない。
『キューティー・ブロンド』や『プリティー・ウーマン』などが好きな人にはお勧めな映画です。

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ハンニバル・ライジング

製作年度 2007年アメリカ/フランス/イギリス
監督    ピーター・ウェーバー

この映画は見る側がどの辺りに重きを置くか。
このシリーズを見たことがあるか無いかの経験値。
これらによって評価が分かれてしまう気がしました。
経験値が高いほど、より残念な気分になるのです。
羊達の沈黙でのレクターに魅せられ、彼という殺人鬼が生み出された背景を知りたい、彼の原点が知りたい。
知的な会話とかけひき。己の信念すら逆手に取られて彼に心酔しそうになる緊張感とギリギリの理性。
そういったものを感じたいと思うのならば駄作だと感じるでしょう。私もその一人です。
インテリジェンスで紳士的な殺人鬼レクター博士。
この作品からはあの彼を連想することも出来ないし、誕生することに納得も出来ません。
所々に紳士的な所作やセリフが垣間見えるけれど、レクター博士の模倣でしかなく上っすべりしています。
本人である筈なのに、別人にしか見えないのです。
彼が天才的な頭脳を持っているとはいえ、それは磨かれなければ只の秀才止まりだった筈。
私はこの作品で彼というモンスターが作り上げられていく過程を垣間見えると思って期待したのです。
彼の悲惨な過去やカニバリズムに走ったきっかけとなる出来事。それはよく分かりました。では彼の頭脳はどうやって磨かれたの?
そう考えてしまうと、残念な出来だとしか言えないのです。

ですが、レクター博士を知らないし、このシリーズは今作が初めてという人ならばそこそこ楽しめるだろうなと感じたのも事実。
サスペンスとして捉えるならば、この映画だけで楽しめる作りにはなっているのです。レクター博士を知らずとも、ある一人の男の復讐劇として見れば適度に緊張感もありスリルも味わえるでしょうから。
無難な作りということで駄作扱いはされないでしょう。
只、シリーズ物の「過去を明らかに」を前面に出して宣伝されているのに初めての人が見ようと思えばの話ですが…

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バベル

製作年度 2006年アメリカ
監督    アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

3ヶ国で繰り広げられるドラマ。
其々に込められた人々の苦悩、心理、葛藤は胸が痛くなるくらいに伝わります。
日本のチエコのヌードやドラッグに手を出し快楽を追うシーンも彼女の孤独を感じて無駄ではないと思いました。
快楽は刹那的で、楽しいと感じていた筈の己の心はまだ悲鳴を上げている。
音が聞こえない、他人が何を言っているのか解らない。
チエコの世界を表現した音の消えたシーンを挿入することによって彼女の孤独が痛いくらいに表現されていた。
世界の人が日本を堕落的に捉えるのではと危惧している方もいらっしゃいますが、その心配はしなくても大丈夫ではないでしょうか。
中には表面的な部分だけしか捉えない方もいるかもしれませんが、これだけ強いメッセージが込められていれば、そうそう誤解する人はいないんじゃないかと思いますし。

アメリカ人夫婦の離れていた心。
夫の前で用をたすシーンも無駄ではないと思います。
全てを曝け出し、鎧を脱ぎ捨てた先にお互いの理解があった。
2人の間にあった愛は子を愛するがゆえの誤解と寂しさと悲しみ。言葉が誤解を生み愛を疑わせて、ふたりを隔ていた。
だが、ふたりは再び守るべき子の存在、共通の愛を思い出しお互いへの想いを取り戻した。

各シーンごとに心に響くメッセージを感じることが出来て思わず涙したりもしたのですが、群像劇に対する私の経験の無さがこの映画の良さをいまいち感じることが出来なかったのです。
感動が盛り上がってきたところで別のドラマに切り替わる。
感動がブツ切りにされ、別の感動を感じるまでクールダウンさせられる。そこに戸惑ってしまったのです。
また、「バベルの塔」にリンクする筈のテーマも受け取れなかったのです。
私は旧約聖書のバベルの塔のエピソードは人間の傲慢や、一致団結すれば神の領域をも侵す力を手に入れてしまうことへの神の危惧。
未だ未熟な魂を持つ人間が力を手にしたらどうなるか…
ならば言葉を隔て、各地へと散らし、その地へ根を生やし間違いを犯さぬようにしよう、という過ぎた力は毒なのだという教えだと解釈していました。
私はキリスト教徒ではないし、そもそもこの解釈が合っているかわかりません。ですから、この解釈を持ったままこの映画を見ていたせいか、各ドラマのテーマと自分の中のバベルの塔のテーマとを上手くリンクさせることが出来ないままエンディングを迎えてしまったのです。
それは私の中で消化不良という感覚を残してしまい、心に響くけれど各ドラマがバラバラのままという残念な結果になってしまいました。

この映画の本当のテーマを読み取れる方には素晴らしい映画なのだと思います。
悔しいのですが、私の理解力の限界を悟らされる作品でした。

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ハード・キャンディ

製作年度 2005年アメリカ
監督    デヴィッド・スレイド

公開当時、遠方の映画館でしか上映してなくて時間が取れず断念した作品です。
やっとレンタルしてきて見たのですが、皆さんの評価が高いのに納得。
派手な演出、派手な音響など何も無い。
しかし、そんな小手先で誤魔化さずとも見ている側が心理的に恐怖へと追い込まれる。
用意していたお~いお茶とポテチが全く手付かずで残ってしまうほど画面に釘付け。

赤ずきんちゃんは正義の味方かサイコな狂人か?
オオカミは罪を隠した悪魔か愚かな被害者か?
用意周到に用意された罠の完璧さ。大人オオカミの懐柔も跳ね除ける会話レベル。彼女は本当に子供なのか?
だが、どんなに過激で残酷な行為をしても、やはり子供だと思い知る。
自分の価値観、正義感を押し付けてこれは正義だと言い切る。無邪気に処刑を開始する。
「悪いヤツを退治するのよ。何がいけないの?」
子供と悪魔の二面性。怖いよっ!!

最後の最後まで、オオカミは自分の罪を認めなかった。
赤ずきんも、自分が何者なのかを明かさなかった。
オオカミも死んだかどうか定かではない。
でも、そんな謎はどうでも良い。見ている間の心理的恐怖は最高レベル。
サスペンス・スリラーが好きな人は是非見てください。お勧めです。

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博士の異常な愛情~または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

製作年度 1964年イギリス/アメリカ
監督    スタンリー・キューブリック

位置付けはブラックコメディ。
しかし、大笑いしろと言われてもそうそう笑えるものではない。
私はブラックコメディというものにはあまり馴染みがないし。

だって怖いよ。

米ソ冷戦状態に
「アメリカ人の体内の液体が汚染されている。水道水のフッ素添加は共産主義者の陰謀だ!」
なんて妄想信じる頭のネジ飛んでる将軍がソ連への核攻撃指令のトップだよ?

大統領の傍で尤も冷静に対処しなきゃいけない将軍は反ソで攻撃指令が出されたと知った途端に報復される前に徹底的にソ連を攻撃しろとか言い放つ。
しかも、
「アメリカ国民の為だ。今実行すれば2000万人の犠牲ですむ。攻撃しなければ報復で1億人が犠牲になる。私は戦争がしたいわけじゃない。国民を守るためだ。」
何?その正義を隠れ蓑にした好戦的思想。

もしも世界が放射能で汚染されたとしても、その時には地下へと非難すれば良い。
アメリカ各地にある地下炭鉱にはせいぜい20万人しか避難出来ないが、コンピューターで知能、身体能力、生殖能力、諸々の条件をインプットして選民すれば問題ない。もちろん、官僚諸君は優先される。
男一人に女10人を宛がえば20年後には人口なんてすぐ増える。問題ない。
こんなこと平然と言ってのける博士は右手が勝手に動いてナチスの敬礼ポーズを取ろうとする。それを左手が制している。
…独裁者の関係者ですかアンタ…。

しかしながら、何とも重いテーマであるにも関わらず、作品全体がブラックなのにどこかユーモアに彩られている。
緊迫する筈のアメリカ大統領とソ連の大統領の電話は、まるで悪戯しちゃった友達にゴメンネ電話をかけているかのような会話。
これから核を落そうかという兵士達の荷物点検は拳銃、弾薬、睡眠薬、モルヒネ…ふむふむ、もしもの時の備えだね?
聖書付きロシア語会話辞典にお金にチューインガムに… あれ?
コン○ームに口紅にストッキング??? …旅行カバン?
「これだけあればベガスでたっぷり遊べるぞ」
さっき核を落として正気でいられるヤツがいるものかとか言ってなかったっけ?結局は他人事?
…なんつー皮肉り方するんだか。
なのにくすっと笑ってしまった。
他にもついつい笑ってしまう箇所が多数。

結局はソ連の報復攻撃は起きて世界は「皆殺し装置」であちこちからきのこ雲。いっそ爽快な程にあっけない幕切れ。
きのこ雲バックに
「また会いましょう~」
なんて歌が流れてくる。会いましょうって…
それ何百年後の話なんですか?!
怖いよ~…

怖いけど、でも釘付けになってしまう。
怖いけど、でもちょっと笑ってしまう。
そうか、こういうのをブラックコメディというのね。
何とも不思議な気分を初体験させてくれた作品でした。

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