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ブレイブワン

制作年度:/2007年
監督:ニール・ジョーダン

ラストまではとても惹き込まれました。
家族を持たないエリカが、愛する男性と結婚を控え幸せいっぱいの日々を送っている。
彼女の目にはN.Yの街は暖かな光を纏い優しい日常を与えてくれる場所。
ビルの片隅が商店街の活気がファーストフードの店も
彼と歩くこの街は幸せな自分を見守っていた。
なのに…

突然の不幸。
いつも訪れていた公園。彼との時間を楽しんでいた場所で理不尽な暴力を受ける。
彼は殺され、自分も死線を彷徨う程の怪我をおわされた。
一瞬で壊された幸せ。
あれほどに愛していた街は姿を変えていた。
どこもかしこも闇を滲ませ彼女の足をすくませた。
恐怖でしかなくなってしまった街へ、それでも出て行ったのは彼のため。
彼の命を奪った者たちへの怒りと憎しみ。
きっと警察が彼の無念を晴らしてくれる筈。

しかし警察ではうわべだけの同情の言葉と形式的な対応のみでロクな捜査をしていなかった。彼女の悲しみや心の傷などおかまい無しに日々起きる事件の
「ほんのひとつの出来事」として忘れ去られようとしていた。
警察は何もしてくれない!絶望感は恐怖を煽る。
警察は市民を守ってはくれないのだ。彼の仇などとってはくれない。
最初は護身用のつもりで購入した銃だった。
心の片隅に復讐という目的もあったかもしれないが、銃というお守りを持たなければ街を歩けなくなっていた。
闇に彩られた街は恐怖に満ちた彼女を引きずり込もうと黒い口を開けているのだから。

たまたま立ち寄った店で事件が起きた。
彼女は購入した銃で自分を殺そうとした犯人を射殺してしまう。
この時、彼女の中で何かが壊れていった。
恐怖に打ち勝つ『力』を手に入れてしまった。
そして法への復讐心も芽生えてしまった瞬間だった。
この事件をきっかけに彼女は『処刑人』となって悪人をその銃で始末しはじめてしまう。

あいつは悪いヤツだ。私は悪いヤツを始末しただけ。
警察など何もしてくれない。
だったら、私が罰を与えてもいい筈でしょう?

何を言ってるの?!私は人を殺したのよ。許されない行為だわ。
こんなの、正義じゃない!

このエリカの心の葛藤そのままに『処刑人』に対して世間の賛否が寄せられる。
でも、誰も彼女を止められない。
そして彼女の傍に現れた『処刑人』を追う刑事。
彼は言う。処刑は法の下で警察が行うべきだと。

そう、彼女を救うには法に裏切られ罪を犯した彼女を法によって裁くべきだったのだ。
彼の復讐と共に法へも復讐していた彼女。
法に裏切られたことがもたらした恐怖が彼女を闇へ引きずり込んだのならば、
法による裁きで罰を受けなければ永遠に彼女は闇の中だ。
彼女自身、自分のしている行為があの憎むべき犯人達と変わりない行為だと感じていたのだから。
それでも衝動を抑えられない自分に苦しんでいたのだから。

人間とは弱いものだ。あらゆる欲に理性を失うこともある。
悲しみに我を忘れることもある。
誰かが何かが一定の枷を嵌めなければ暴走する。
だからこその法律なのだと思う。
罪は角度を変えたら罪ではなくなる。見る側によって形を変えてしまうのだから。
無理やりにでも見る角度を固定しなければ社会が成り立たない。
感情でそのルールを曲げてしまってはいけないものなのだと思う。

刑事の気持ちも理解はできるが、あのラストはけしてエリカの救いにはなっていなかったと思います。
この映画に正しいラストなんて存在しないのかもしれません。
でも、彼女の苦悩と痛みを見せられていただけに救われなかった彼女の姿にどうしても納得がいきませんでした。

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